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1988 夏 その3

ホテルでの朝食は何故か落ち着く、、、
とくにホテルで出される和朝食メニューが格別、、、よくあるビュッフェ形式で和食もコンチネンタルもあるセルフで取るものではなくて、そのホテルにある和食レストランで一人ひとりお盆にのせられた 焼き魚におひたし、煮物もあってしゃれたひじきに梅干、おしんこ、、、定番の和紙に包まれた焼き海苔にご飯は小さな小櫃に入って来る、、、上品に軽くついで二杯位しかない立ったお米、、、都会のビルの上だと言うのに綺麗に作られた日本庭園が窓から見える、、、甘い立ったお米をゆっくり口の中でまわして味わってゆっくりお茶を飲む、、、気が利いた女の子が着物姿で清々しくお茶をついでくれる、、、気持ちよい朝、、、
こんな時は一人がいい、、、
夕べ泊った女とこんな所に来て朝から香水の匂いを嗅ぎながらお茶を飲んでもゆっくりはできない、、、そんな時はルームサービスで朝食を頼んで一緒の白いバスローブを着たまま、髪の毛ボサボサのまま、窓際にテーブルをくっつけてとなりどうしの彼女の足をスリスリしながら、景色を見ながら、食べるのがいい、、、
まったく男は勝手だ。
俺はたまに一人でニューオータニに朝食だけをとりに行ったりする、、、どんなマッサージよりも、どんなエステよりも、リラックスできるから、、、ほんの一息、、、
いつだったか美香が言った、、、(尾茂くんは私がいなくても一人で生きていけるね、、、)
美香はとびきり料理がうまかった、、、和食は格別、、、
でも、そんなんじゃないよな~、、、そんな言葉が何故かむなしい、、、

あっ、ヤバイ!、、、飛行機の時間に間に合わない、フライト時間は9:55分!
思いにふけりながら朝食をとっていすぎて8時をまわっていた。俺はいそいでチェックアウトを済ませ、車で空港に向かった。
バジェットレンタカーに車を返し、ボーディングゲートまではほんの少しの距離だったが送迎バスで送ってもらった。チェックインカウンターは9時を過ぎていたせいか誰もいない、、、小走りでスーツケースを引きながらカウンターに行きチェックインを済ませボーディングゲートに着いた時にはもうすでにみんな搭乗していた。
悪そうな顔をしてボーディングパスをゲートで渡すとアビアンカ航空の赤いスーツを着た女性はニコッと愛想よく笑ってくれ、俺を違うゲートに案内してくれた。
そうそう、今日はファーストクラスだった、、、もう安心、、、
ファースト専用のタラップを歩いて最前部のファーストクラスのシート、もうみんな搭乗しているはずなのにシートには誰もいない、、、20席ほどのファーストに今日は俺一人だけだった。こんな贅沢なスペースになにかスペシャルな気分で、、、
何故か少し恥ずかしい、、、
予定通り、離陸してドリンクサービスが始まった。
タルタルソースにシュリンプのオードブル、オリーブとピクルス、クラッカーにクリームチーズがのったトレーが白いテーブルクロスのひかれた上に置かれた。ドリンクはホワイトワインを注文してゆっくりする事にした。朝、ホテルで朝食をあんなにとらなければよかったと少し後悔をしていた。三杯位ワインを飲みほし、お腹がいっぱいになった頃、メインの注文をしに来た。(ビーフにしますか?フィッシュにしますか?、、、)って、迷って断ろうとした時、スチワーデスは(今日はお客様だけですので両方召し上がってください!、、、)って、、、俺は嬉しそうな顔だけはしたが内心、胃袋はギブアップを叫んでいた。
それでも俺は慢心の笑みをスチワーデスに向けて無理やり口にほうばりたいらげた。
ほんとにお人よしな俺、、、
お腹がメチャクチャきついのでシートを倒して横になって寝る事にした。ファーストクラスのシートはほぼフラットになるのでありがたい、、、毛布を掛けてゴーという飛行機の音の中、うとうととして寝返りをうった時、少し薄目を開けて見た光景に俺の目を疑った。
隣の列の最前席に二人の女性がすわって食事をナイフとホークまで使って食べている、、、(あれ?ファースト、俺だけじゃなかったっけ?、、、)これは夢?、、、
二人は白いブラウスに赤いリボン、赤いスカートに黒いストッキング、黒いパンプスは脱ぎ捨てて前のフットレストに足を投げ出している、、、(なんなんだ!この光景は、、、)二人はスチワーデスだった。スチワーデスだって昼食をとるのはわかる。だがしかし、、、
いくらお客の席が空いているといったって、、、俺が寝ているといったって、、、たくさん料理があまっているからといったって、、、そこにすわってくつろいで食事をするなんて、、、
俺には信じられなかった。
それにパンプスまで脱ぎ捨てて足を投げ出しているなんて、、、黒いストッキングのつま先のおりかえして縫ってある縫い目を見せられる事は俺にはどうにも刺激が強すぎる、、、
いつだったか、車の隣に乗せた彼女が調子にまで乗ってストッキングをはいた足をパンプスを脱いで立てひざをした事があった。俺は頭にきて(なんて事するの!犯されても知らないぞ!!)本気で怒った事がある、、、
あれも、これも、、、人間なんてホント何考えているのかわからない、、、
まあ、これがアビアンカ航空、コロンビア!
何故かワクワク、、、期待が持てる、、、
シェードをスライドして外を見るともう夕暮れ、、、雲が赤く染まり、空の上の日が落ちるのは早い、、、徐々に機体が旋回をはじめ、高度を下げるのがわかった。
雲のあいまを抜けるともうすぐそこにはボゴタの街の明かりが広がる、、、明かりは碁盤の目のように整列していて綺麗だ。
標高2700mの都市、ボゴタ、、、
俺の夢が広がる、、、

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