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1988 夏 その2

ロサンゼルス国際空港、、、
俺にとっては何か独特な感じ、、、
どの国の空港もそれぞれ、独特な匂いがするが、この空港は俺には匂いを感じない、、、
よく、人はアメリカンドリームだなんて言ってワクワク胸を躍らせて成功をつかむため、アメリカ入りするものだが、俺には無機質で匂いがなく、何故か寂しい、、、
初めて香港カイタック空港に降り立った時でも、初めてバンコック入りした時も、ボンベイに真夜中着いて真っ暗な道を走っていた時でも、、、トランジットでアムスに寄った時でも、景色や町の匂いや空気が何か俺をワクワクさせる、、、だがここロスにはそれがない、、、
はじめから好意を抱いていない者には女と一緒で、そうやすやすと受け入れてはくれない。
空港パーキングではいつもテープのアナウンスが英語とスペイン語で繰り返し流れている。
俺は空港にあるバジェットレンタカーでシボレーを借りてダウンタウンに向かった。
今回、コロンビアは初めて、、、ロスからボゴタの往復ディスカウントチケットを買うため、ロスで二泊の滞在だった。
中心地、リトル東京のすぐ脇にある全日空ホテルにチェックインしてその近くのエージェントに入った。もう、夕暮れ時の閉店間際だったからなのかいやに世話しない、、、でも今回、チケットの手配をして明日発券してもらわなければ、明後日ロスを飛び立てない、、、このロスには二泊以上ごめんだ。(Excuse me, I want to buy a ticket to Bogota Colombia as soon as possible.)人が入って来たというのにもくもくと書類を書いているカウンターの女性に声をかけた。(はい!、、、チケットですね。少々お待ちください。)俺がベタベタの英語でしゃべったからなのだろうか?、、、あまりにも日本人的な顔つきだったからだろうか?、、、彼女は日本語で受け答えた。この世話しない中、無愛想だが手際はいい、、、予約のモニターを見ながら(9:55発、アビアンカ航空がありますが、、、クラスは?)(エコノミーでお願いします。あっ ちなみにビジネスクラスはいくらですか?)日本ではエコノミーとビジネスクラスの値段は倍以上の差があるが、海外ではそんなに違いがない場合があるので念のため尋ねてみた。すると、、、(この便はビジネスクラスはなくてファーストクラスが100ドルプラスの620ドルですが、、、)(えっ!それそれ!ファーストクラスでお願いします!)俺がここロスまで来る日本で買ったチケットより安いのに驚いた。しかも、100ドルプラスでファーストだ、、、しかし、このシステムはわからない、、、
彼女はデスクの中からチケットを取り出して手書きで発券しようとしたので俺はすかさず、(明日のフライトには間に合いますか?)と、聞いてみた。彼女はモニターをチェックする間もなく(たぶん、、、)この便はいつもすいているようだ。
予定より一日節約できた事と明日、ロスで何するか悩まなくてすむ事で少し嬉しかった。早々、チケットを受け取りホテルに戻ってシャワーを浴びて町にくりだす事にした。
外はまだ明るい、、、
成田から12時間、ロス行きの便はいつも満席状態で空いている席の肘掛を起こしてシートを三席位占領して寝る事はできない、、、シャワーを浴びて腰にバスタオルを巻きベットカバーをめくる間もなく上に横になっていたらウトウト寝てしまった。3時間あまり、、、
枕元はよだれでべっとり濡れている、、、時間がない!スーツケースから新品のBVDパンツと靴下、クリーニングしたてのシャツとジーパンを取り出して、いそいで着替えた。何を期待しているのか?、、、こういう時はいつも新品のBVDと靴下でワクワク町に飛び出す。
外はもう暗い、、、
ロスの町はどこも道がだだっ広い、、、さすがアメリカ、外には人っ子一人いないせいだろうか、、、道が広いためだろうか、、、何か、寒々しい、、、
海岸沿い、テレビでよく見るビキニにローラースケート、裸でランニング、そんなものは何もない、、、ここサンタモニカ、、、なぜか思い出すのは吉川晃司。美香は大の吉川晃司ファン、家で飼っているオスのシーズの名前も晃司だった。あ~あ、もうこんな所で美香の事、思い出すなんて、、、新品のBVDの特攻服着込んでいるというのに、、、
誰もいない閑散としたサンタモニカを後にしてまた町の方に向かった。一時間位走り回っただろうか、、、俺は何をさがしているのだろう、、、しゃれたレストラン?、、、ディスコ?、、、それとも女のいる所?、、、まあ、なんでもいい、、、このロスの空気を吸っているだけで、、、
こういう時の時間は果てしなく長い、、、
センターの裏通り、小さな商店が軒並み立ち並ぶ、明かりの光々と付いたストリート、テンポのいいスパニッシュの曲が流れる、、、メキシコ人街だ。俺はビルの谷間のちょっとした空き地に車を停めて歩く事にした。こうも乱雑とした商店街はロスではめずらしい、、、売っている物といえば食料品に洋服、下着、おもちゃに家具、あらゆる日用品がすべてここでそろう。薄暗い路地を入っていけば、怪しい赤いランプ、、、アダルトショップまである。そんな下卑た路地裏には薄汚れたランニングシャツのメキシコ人であろう奴がしゃがんでカップヌードルをすすっている。腕にはへたくそなへびの刺青、、、何か香港の九龍城を思い出す、、、
俺は腹がへっている事に気が付いた。こんな所まで来て、特攻服まで着込んでカップヌードルはないだろうと思い、小奇麗なメキシコレストランを探した。
行けど行けど、タコスのファーストフードやハンバーガーショップ、オープンスペースのカウンターBARばかり、車に戻ってホテルに帰ろう、、、そう決めてさっきとは違う道をブラブラ帰ることにした。同じ道ではつまらない、、、俺の人間ジャイロは何処へ行っても正確だ!
途中、3枚、9ドル99セントのTシャツを買って、もう車にまじかな所でオレンジ色の看板を見つけてしまった。おー吉野家だ!
結局、俺は味噌スープにビーフボールをかけこんでホテルに戻った。
時間は11時を過ぎていた。新しくおろしたBVDのパンツを脱いで広げたままイスの肘掛に掛けた。(もったいないから明日もこれをはいて行こう、、、)
3枚、9ドル99セントのTシャツが入ったコンビニ袋のような手下げが何故かむなしい、、、
明日の朝は早い、、、
ロサンゼルスの夜は長かった、、、

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