最近、やっとクラシックコンサートが穏やかに楽しめるようになってきた。
俺にとってクラシック音楽をやっている人達は何か特別な匂いがした。何かお澄ましでとっつきにくい、、、だいたいクラシックと言うより文科系ってやつはどうしていいかわからなっかた。。。でも何か特別な、、、特にクラシックやっている女性は、、、だから、なんでも俺よりできると思っていた。俺の知らない事は何でも知っていると思っていた。
イギリスにいた頃、、、俺は友達との関係で南のサザンプトンに住んでいた。サザンプトンは他国からの輸出入のための大きなドックがある町で、特にこの国の車の輸出入は大部分、
この港を通過する。そんな町で車のデイーラーをしているデイブと俺は住んでいた。
デイブは大柄な体に似つかわず、クラシック音楽が意外と好きでそんな友達も何人かいた。
ある日、いつものようにデイブとパブに食事に行った。そこには何人かのデイブの友達が飲んでいた。その中の一人に小柄な日本人の女の子がいた。(ハイ!幸子!久しぶり、、、)デイブは機嫌よく彼女に声をかけたが、彼女は俺を見るなり少し機嫌悪そうによそよそしく(ハイ!、、、)って、、、海外で出くわす日本人は何だかみんなこう、、、ロンドンやパリに留学している日本人は一緒に住んでいるやつらとは日本人同士いつもつるんでいるくせに初めて会う日本人には気をゆるさない、、、(何でこんなところであなたと会うのよ!、、、)って感じで、、、他の国のやつらは自国同士とわかるとハグハグチュッチュするのにね、、、
文化の違いはわかるけどせっかく留学しているのだからもう少しなじめって!、、、
デイブ曰く彼女はバイオリニストでイギリスに留学しているらしい。(へー何年位イギリスにいるの?)と尋ねると(今年で七年目です、、、)口数が少なく俺とあまり話したくないんだなあーと思い、デイブや他のイギリス人と話をしていた。(まあ、パブだ。ステラでも飲んでリラックスしよう!)時間もたちいい具合になってか、さっきの悪かった気分も忘れ幸子にちょっと聞いて見た。(いつもどの位バイオリン弾いてるの?)って、、、幸子は(弾くときは9時間位、まあ、午前と午後で6時間位かな、、、ホントはもう少しやりたいんだけれど今の部屋は夜弾けないから、、、)得意げに、、、俺はすかさず(そんなにバイオリン、バイオリンで音楽ばかりじゃ遊べないね!)俺は穏やかに言ったつもりだったが(遊びって何よ? そんな暇ないわねー)またムッとさせてしまった。そんなつもりじゃないのに、、、
もしかしたら俺がくどこうとでもしていると思っているのだろうか、、、また俺は追い討ちをかけてしまった。(クラシックコンサートに行く人達は大体、地位も名誉も俺たちよりずっとある人たちでしょ?そう言う人達はいろいろ経験つんで人生歩んで来てる訳で、、、人の見る目は鋭いんじゃないかなあー?そう言う人達に言わば感動を与える演奏をするにはこちらもあちらにない経験をつむ事なんじゃないかなあー、、、練習も大事だけどいい恋愛もたくさんした方がいいんじゃない?) 幸子を見ていて、容姿だとか、仕草だとか、匂いだとか、余計なお世話だが、あまり男性経験ないんだろうなーと思い、間違っていたらごめんなさいだけど、、、ついつい口にでてしまった。以前からそれは男として疑問に思っていたのでチャンスがあったらクラシック音楽やっている人達に言ってみたかったから、、、
30歳過ぎだと言うのに勉強勉強で、男性経験もなしに、、、それでいて生意気に人に意見を言う、、、
ロンドンに住んで10年ピアニストとして活動している女性と出くわして、実は口説こうとした事がある。
俺はその時イギリスでレースやっていたし、年に2,3回はマラソン出ていたし、毎日ジムがよい、、、体はもうギンギンだった。そんな体育会系の俺はしっとりおっとりした文科系音楽家にあこがれていた、、、コンプレックスでもあった。ある日、俺は日本でつくった18Kのダイヤの指輪を彼女にプレゼントしようと思った。ダイヤは0.4カラット位のそんなに大きくない物、、、
いつもの様にロンドンのレストランで食事をしてワインも入り気分が盛り上がったところで俺は小さな赤いリングケースを開けて彼女の前に差し出した。(これ、俺がデザインしたリング!、、、)彼女は一瞬、顔がこわばった。指輪の入った小さなケースを見つめながら、けしてその指輪には手を触れようとはせずに両手でケースを持ったまま、、、彼女はしばらくそれを見つめていた。(どうしたの?このデザイン気に入らない?)俺は指輪を取って直接、彼女に手渡そうとしたその瞬間、パシッとケースを閉めて彼女は俺につき返してきた。
(私、、、そんなんじゃないから、、、)(えっ、彼氏でもいるの?)俺はおもむろに尋ねた。
今まで何回か彼女とは食事しているし、そんな時、男の影はまったく感じなかったから、、、
彼女はつずけて(いないですよー、、、でもお付き合いするとかそう言うの考えたくないですから、、、)ガックっときたけれど俺は(こんなの気にしないで、、、ただ気持ちだから、、、もっと話をして徐々に大人の関係になればいいんじゃないかなあー?、、、)その言葉に彼女はプチっと反応してしまった。(何?その大人の関係って!!そんな人だと思わなかった!)
プリっと彼女は席を立ち指輪を置いたままいきなり帰ってしまった。俺は追いかけはしなかった。むしろ、その後からジワジワと怒りがこみ上げてきだした。。。
(そんな人だと思わなかったって、お前の言うそんな人ってどんな人よ?!)俺は指輪のケースをすぐにポケットに入れて清々しい顔をしてワインを飲んだ。
(あー、ロンドンでよかった、、、これが日本だったらものすごく恥ずかしいだろうなあ、、、)と、、、そんな事もあってか、クラシック音楽やっている女性には疑問と不信感があった。
それは女性にだけではけしてない、、、
オンド・マルトノと出会ってからと言うもの、しげしげとクラシックコンサートに足をはこんだ。サントリーホール、オペラハウス、東京文化会館、、、曲もいろいろ聴いた。演奏家も、オーケストラも大小問わず、、、マイナーな小さな教会でやる演奏もたまに聴いた。
そうこうしている内に、また俺の悪い癖が出てきてしまった。人間、そんなに変われないものだ、、、
ステレオアンプや無線機など、裏ぶた開けて抵抗やコンデンサーの配列や半田づけを見ていろいろな事を感じ、感動する、、、俺には人間関係もまた同じ事をやっているような気がする、、、人には生い立ち、育ちがあり、そして経験がある。その積み重ねは様ようにして今のその人に表れているものだ。。。そんな見方しかできない俺がクラシックコンサートに行きオーケストラの演奏家たちを見ているのだから大変だ。
一番目につくのはシューズ、、、クラシックコンサートは聴く側も少なくてもジャケット位ははおり、服装には気をつけているのにオケの演奏家たちはみんながみんなではないがシューズ位、磨いといてほしい。本皮の底の手縫いのステッチが入ったイタリアシューズとまでは言わないが、かかとをへらしたくつなどはいていては、いい音などでるはずがない。
ステレオアンプが神経とがらせて配列、半田づけに気を配ってこそいい音が出るように、
人間だって身なりに気を使わないようでは、いい演奏ができる訳ないと思う。クラシック音楽をやっている人達に言わせれば、身なりより練習、鍛錬と言う事になるのだろうが、けしてそれだけではないと思っている。。。そんな人の家は見なくてもだいたい想像つく、、、
乱雑にシャツやセーターがベットの上にちらかっているだろうし、クローゼット開ければ押し込んだままのジャケットやパンツが、、、引き出し開ければ下着がちゃんとたたまれていなく丸めてある、、、バスルームの洗面台の上にはもうだいぶ使い込んだ歯ブラシが何本も無造作にコップにつっこんであったりする、、、鏡だって飛び散ったとれない歯磨き粉の白い斑点が磨かれないままこびりついている、、、そしてピアノの上には積み上げられたスコアボードと本の山、、、
極めつけは靴下。 黒いスーツに蝶ネクタイ、みんな同じに見えるからって個性を出してと言わんばかりにみんな色がそろってない、、、黒いスーツだと言うのに紺色やグレー、そんなところまで客は見ていないとでも思っているのだろうか?、、、ガビーン!白いソックスはさすがにいないがこげ茶のソックスが、、、それが学生の素人楽団ならともかく、サントリーホールでOOフィルやO響の名のあるオケでの事だ。以前、演奏が終わって楽屋に訪ねた事があった。(お疲れ様でした。よかったですよ!)定番のあいさつを友人の演奏家とかわし楽屋を出ようとした時(お疲れ様でした!)何人か楽器をしまい終えて帰るメンバーを見て驚いた。なんと演奏で着ていた黒いスーツのままでネクタイだけとってコートをはおり帰っていった。もちろんシューズも履き替えずにそのまま、、、
今はあまりそんな事、考えずにコンサートに行き音楽を聴いている、、、自分が楽しめないから、、、カジュアルな服装の時もあるがシューズだけはイタリア物の俺のお気に入りをはいて、、、
オケの人達の黒いスーツが少しぐらいテカッていようが、、、
黒いシューズのつま先にこすった跡があろうが、、、
黒い襟元がふけで白くなっていようが、、、
女性のバイオリニストの二の腕が弓を引くたびプルンプルンいっていようが、、、
黒のストッキングのふくらはぎあたりに洗濯したためか玉ころがいっぱい着いていようが、、、
俺はお構いなしに清々しくモーツアルトを聴いている、、、