本当に夢心地とはこの事か、、、
どうやって夕べホテルに帰って来たのか覚えてすらいない。久々にぐっすりよく眠れた。
最近、寝つきが悪いのは、結局それかよ!ってな感じによく眠れた、、、
朝、8時、キッカリ。ズドーン!の一発で俺は目が覚めた。それは日本でよく日曜日、運動会のある晴れた朝打ち上げる花火の音ではあるわけがない、、、目が覚めた瞬間、ズドーン、ズドーン、ババババババババー、いよいよパレス攻撃が始まった。
打ち合わせをしたかのようによくも8時キッカリに始めるものだ。規則正しい攻撃、、、
あわてて洋服を着た俺は向かいの渡辺さんの部屋へ向かった。(ドンドンドン、、、)(渡辺さん!渡辺さん!)渡辺さんもあわてていたのか着替え途中で、前ボタンを留めながら部屋のドアを開けて出てきた。(すごいすごい!、、、始まったよ!)部屋に入るなり大きな窓際に走った。そこはまさに戦場の特等席、パレスの丘が目の前に広がる、、、すでに重戦車が花火をちらし戦火で彩られたパノラマだ!、、、5,6台のエチオピア人民戦線の重戦車がパレスの周りを囲っているフェンスを一斉に押しつぶし、森の木々をなぎ倒し、前進しながら大砲を撃ちはなっている、、、ズドーンと打つたびに重戦車が後ろにつんのめる様がよく見てとれる、、、大砲の先近くの木々は弾が打ち放たれた瞬間、ボッと火がつき燃え上がる、、、そんな合間を見計らって、何十人もの戦士が機関銃を撃ちながらパレスに突入した。
ババババババババー、俺たちは流れ弾が当たらない様にじゅうたんの床に身を伏せ、窓を全開にしてかじいるように二人並んでその様を見ていた。不謹慎ながらこんな時だと言うのに二人は小さな子供の様に足をバタバタさせて興奮している様だ、、、
パレスからわずか200m位しか離れていないところで観戦している俺たちは、絶対流れ玉などきやしないとでも思っているのか?、、、まるでスクリーンの上で起こっている映画でも観ているつもりなのか?、、、だがそこには現実がある、、、信じられない現実が、、、
それは生の音、爆風、煙のきな臭い匂い、、、全開にしている窓から、、、200mしか離れていない空気の層から、、、なまなましく伝わってくる。
パレスの丘は大きな木々で覆われていて、ここからはその下でどんな死闘が繰り広げられているのかは見て取れない、、、しかし、時折、手りゅう弾や爆弾の炸裂する火花が上がるとその後、爆風がかすかに頬をなでる、、、目で見た爆発、音、爆風、その時差で戦場の近さをまさに肌で感じる。地響きさえもこのホテルの床を伝わり確かに感じる、、、
これだけパレスをエチオピア人民戦線が包囲し攻撃している中、社会主義国家政権の奴らは何人いるのかは知らないが、持ちこたえられるのか?、、、おそらくあと数時間もすれば全滅するか降伏して残忍な殺され方をしていずれにしても地に落ちるのだろう、、、
アフリカ、ルアンダやアンゴラの内戦では生きたまま目をえぐられ、耳、口をそがれ、手足を切り刻まれ殺されていく様がよく報道されていた、、、
俺はそんな壮絶なシーンを頭で想像しながら報道ではないそこで起こっている現実の前で絶句した。。。何時間が過ぎたのもわからないまま、床にうつ伏せに伏せたまま、パレスの攻撃はつづく、、、
やがて重戦車の爆音や銃声はやみ、不気味な静けさの中、爆発や重戦車の発砲で火のついた木々のメラメラパチパチと燃える音だけがパレスになり響く、、、
そんなきな臭い中、パレスの正面ゲートから一人の男が走って逃げてきた。茶色っぽい軍服を着ているが前ボタンがとれはだけたまま、、、社会国家主義政権の奴らだろう、、、後ろから二人の人民戦線の戦士が追いかけてきた。ヤバイ!打たれる!と思ったがその差はすぐにちじまり追いついた。ちょうどホテルの横あたり、俺たちのいる部屋の真下あたりでそいつは息絶え絶え、うつ伏せに倒れこんだ。俺はその場で射殺されると思い自分が声を出すのをとっさに両手で口をおさえた。あんな大きな機関銃で近距離から頭を打とうものなら顔ごと吹っ飛んでしまう事は、よくボコタで見ていたから、、、
俺は両手で息ができないほど口をおさえ嗚咽した、、、
ウッウッうなりながら、、、涙が止まらない、、、
奴らは知っていた、、、後始末に困るから、、、
冷静に腰から小さな拳銃を取り出すと、躊躇もせずにこめかみを打ち抜いた。
俺はバンっと打たれた瞬間、息が止まった。打たれた奴は一瞬で体全体の力が抜け落ち、地面にせっぷした。打たれたこめかみからは一瞬、ストローから吹き出るトマトジュースの様に血があふれ出て地面に広がる、、、すぐさまジープが来て二人でそいつの手と足を無造作に持つとジープの荷台に積んでパレスの奥へと走って消えた。
地面にのこった血のあとはやがてしみこみ、黒く残ってはいるが、砂利と砂でそれが血のあとだとは見たものだけにしかわからない、、、
長い間、社会国家主義政権のもと、社会主義の国だったエチオピアがたった今、俺の目の前で民主主義国家へと変わった瞬間だった。。。
お金だとか、、、
会社だとか、、、
家族だとか、、、
女だとか、、、すべてこめかみから吹き出たあの血の色で赤く染まって何も見えない、、、
ただただ、俺一人、、、頭の中は5000Hzだか、6000Hzだかのキ~ンと言う音だけが鳴り響いている、、、
合掌、、、
うしろのエンジェル 2008年02月13日(水)10時34分 編集・削除
Naoさん、、、なぜ、男の人は戦うの?何のためなの?誰のためなの?
倒れた兵士が愛する人だったら、息子だったらと想像しただけでとてもとても悲しい・・・
何もなくてもいいから、せめて生まれたままの姿で土にかえって欲しい。
こんな時も、どんな時も、そんな時も、いつも女性は待つだけ、祈るだけ、、、
lonely soldier boyはしばらく聴けない・・・・・